目覚めたコロポックル 作 キムドン
「フキ取りに行こうか健太」とおじいちゃんに誘われて、健大は裏山にフキを取りに出かけた。山道の路肩にはたくさんフキが生い茂っていた。
「茎が赤いのと青いのがあるから、青いふきを選んで切り取るんだ。上の葉っぱを落として茎だけビニール袋に入れるんだよ。」
「青いフキ、赤いフキ」とつぶやきながら健大はフキ取りを始めた。
フキを切り取るコツはすぐ覚えた。あっという間に刈り取ったフキでビニール袋はいっぱいになった。
みずみずしいフキをたくさん取った健大は、おじいちゃんのところにもどった。
「健大、たくさん取ったね。すごいなあ。」
ニコニコしながら健大を迎えたおじいちゃん。
その足元には、長さ一メートルもあるフキの束が置いてあった。
「おじいちゃんの取ったフキはすごいね。僕もこんな大きいフキを取りたいな。」
「この先に大きいフキがたくさん生えているんだ。」
おじいちゃんは健大を連れて山道の斜面を降りて行った。
そこには健大が取ったフキの何倍も大きいフキが生えていた。
「僕もおじいちゃんと同じくらい大きいフキをとってくるよ。」
健大の目の前には身長より背の高いフキが何本も生え茂っている。どのフキを取ろうかとキョロキョロしていると太い茎から青い光を放っているフキが目に入った。
そのフキは背丈が3m、葉も直径1m以上もあり、まるでパラソルのようだった。
健大は無我夢中で青い光を放つフキを切り取った。
肩に担ぐととおじいちゃんのところへ戻った。
「おや、これは足寄町にしか生えないラワンブキだ。どうしてここにあるのかな。不思議だ。」おじいちゃんは首をかしげていった。
家に帰ると二人がとってきたたくさんのフキと健大の担いできた巨大なフキを見て、おばあちゃんは目を丸くして驚いた。
「さあ、さっそくフキをゆでて、皮むきをしなきゃあ。健大も手伝ってね。」
おばあちゃんが台所でフキをゆでている間、健太は青く光っている巨大なフキの茎から目が離せなかった。青い光が少しずつ根元の方に移動して、切り口からポーンと飛び出したのだ。きらきら光る青い玉はポンポンはずみながら畑の真ん中に飛び込んだ。
健大が慌てて追いかけたが、青い玉はもうどこにも見当たらない。健大は青い玉が飛び込んだ場所に目印にラワンブキを置くとおじいちゃんを大きな声で呼んだ。
「健大、青い玉は探さないでそのままにしておいたほうがいいな。もしかしたらフキの下のコロポックルかも知れないぞ。」話を聞いたおじいちゃんは健大に言った。
「コロポックルはアイヌ語でフキの下の人という意味だよ。コロポックルは平和を愛する小さな小人でフキの下に隠れて住んでいたんだ。その姿をみんなの前に現さないので、「森の妖精」「森の神様」ともいわれているんだよ。」
「コロポックルは、今はもういないの?」
「うん、アイヌの人との争いが起きてね。それを嫌って平和な土地を求めて姿を消したそうだ。今もどこかでひっそりと生き続けているかもしれないね。だからフキから出てきた青い玉はそっとしておこう。」
健大は、おじいちゃんの話を聞いて、フキの中から出てきた青い玉は「コロポックル
その日、おじいちゃんの家に泊まった健大は、青い玉のことが頭から離れず、いつまでも眠れなかった。
うとうとしていると健大の寝ている部屋の窓に青い光が差し込んできた。健大が恐る恐る窓から外を見ると裏の畑に色とりどりのフキがびっしり生い茂っている。
その真ん中に健太が置いたラワンブキが青い光に照らされすっくりと立っていた。
パラソルのような大きなフキの葉の上に、小さな妖精がフキを片手に座っていた。
「コロポックルだ。」健大はつぶやいた。
コロポックルはラワンブキの葉に上に立ち上がるとざわざわと風に揺れているフキの群れに静かに話しはじめた。
「今日、私は突然目覚めた。しかし、まだ今は私が姿を現す世にはなっていない。私はまた永い眠りにつく。自由に姿をあらわせる時が来るまでフキの下に姿を隠していよう。さあみんな、再び時の旅へ出発だ。」
コロポックルが夜空に小さな指を向けると指の先から青い光が放たれた。すると畑中の色とりどりのフキが宙に舞いあがり、光の尾を引きながら次々と消えていった。
「健太、もう朝だよ。」おばあちゃんに声を掛けられ健大は慌てて飛び起きた。
そして、寝巻姿のまま、急いで裏の畑を見に行った。