りんちゃんの赤いランドセル
作キムドン
りんちゃんは四月から小学校一年生。
赤いランドセルを買ってもらって大喜び。
早速、ランドセルを背負って庭に出ていきました。
暖かい春の日差しが降り注いでいる庭はとても気持ちよく、りんちゃんはスキップで敷石を渡って行きました。
空っぽのランドセルが大きく揺れてりんちゃんの背中で踊っているようです。
バードテーブルでエサをついばんでいたスズメが三羽、りんちゃんに話かけました。
「チッチッチりんちゃんの赤いランドセル、とってもかわいいね。ランドセルの中に入ってみたいな。チチチッ。」
「いいよ。でも中を汚さないでね。」
ランドセルを褒められたりんちゃんが喜んで答えました。
スズメはチュンチュン鳴きながら、ランドセルにとびこんでいきました。
「ポッポポー、あれっずるいや、僕もりんちゃんの素敵なランドセルに入れてよ。」
いつの間にかやってきたキジバトが言いました。
キジバトはいつも後からやってきて、スズメを押しのけてバードテーブルの鳥のエサを横取りするのです。
キジバトに『素敵なランドセル』と褒められたりんちゃんは機嫌よく言いました。
「いいよ、でもランドセルの中ですずめをおしのけてけんかしないでね。」
キジバトはバタバタと羽ばたきをしてランドセルの中にとびこんでいきました。
その時突然、りんちゃんの目の前にカラスが現れました。
「カーカーカー、オレもりんちゃんのカッコいいランドセルに入りたいな。」
カラスは時々、庭にやってきて大きなくちばしをシャベルのように使ってテーブルのエサを全部すくい取っていく乱暴者です。
そんな暴れ者のカラスのお願いもりんちゃんはやさしく聞いてあげました。
「カッコいい」と褒められてりんちゃんはうれしかったのです。
「いいよ、でもランドセルの中で大暴れしないでね。」
カラスはりんちゃんの返事を聞くとバサッと大きな羽音を立ててランドセルの中にとびこんいきました。
家の中からじっと様子を見ていた猫のマロが庭に飛び出してきました。
マロはいつも窓からバードテーブルに集まってくる鳥たちを見張っていて、いつか鳥たちを捕まえてやろうと狙っていました。
「ニヤーン、りんちゃんのふしぎなランドセルにマロも入れてよ。」
「ダメよ、マロは鳥たちを捕まえる気でしょう。鳥をいじめるマロは入れないわ。」
どうしてもりんちゃんのふしぎな赤いランドセルに入ってみたいマロは言いました。
「これからは、とりたちをいじめないよ。みんなとなかよくするからさ。」
「それならいいよ。絶対いじめないでね。」
りんちゃんの許しをもらってマロは喜んでランドセルの中に入っていきました。
りんちゃんは、少し重くなったランドセルを背負って庭から、家の前の道路に出ていきました。
すると、お向かいの家の玄関の戸が開いて、黒いランドセルを背負ったけんちゃんがとび出してきました。
けんちゃんも四月からりんちゃんと同じ小学校の一年生です。
「あっ、りんちゃんもランドセルを背負っている。りんちゃんのランドセル赤くてとってもかわいいね。」
「ケンちゃんのランドセルも黒くてカッコいいよ。」
二人は、道路の真ん中でお互いのランドセルを見せ合いました。
「りんちゃんのランドセル、重そうだけど、何が入っているの。」
とけんちゃんがりんちゃんに聞きました。
「それは、ヒミツ。けんちゃんこそ、ランドセルの中に何が入っているの。」
「勉強の道具だよ。教科書にノート、それにふでばこ。ランドセルはそのためにあるんだからね。りんちゃんもそうでしょう。」
「ええっ。そうなの。いや、そうだよ。」
りんちゃんはあわてて返事をすると、けんちゃんに「また、明日。」と言って急いで庭に駆け戻りました。
そして、ランドセルのふたを開けて中をのぞいて言いました。
「みんな、早く出てきて。ランドセルには勉強の道具を入れるんだって。みんなのうちじゃないのよ。」
りんちゃんの声を聞いてランドセルの中からスズメ、キジバト、カラスがぞろぞろと出てきました。
驚いたことに出てきた鳥たちはみんな、背中に小さな赤いランドセルを背負っています。
「チチチッ。ランドセルの中に小さな赤いランドセルがたくさんあったよ。背負ってみたら、とっても似合ってすてきだよ。」
「ポッポポー、私たちも四月から小学校の一年生だ。うれしいな。」
「カーカーカー、オレは勉強が嫌いだけど…、この赤いランドセルはカッコいいなあ。」
「ランドセルの中、とても楽しかったよ。りんちゃんありがとう、じゃあ、また明日。」
と鳥たちはりんちゃんにペコリと頭を下げてと次々と飛び立っていきました。
最後にマロが背中に赤いランドランドセルを背負って出てきました。
マロはえらそうに、つんとすました顔でりんちゃんに言いました。
「りんちゃん、ランドセルには勉強の道具を入れるんだよ。じゃあ、またあした。」
と言って、家の中に入っていきました。
おしまい