ゆきちゃんの雪だるま 作 キムドン
色白のゆきちゃんがゆめみの幼稚園にやってきたのは、2月初めの大雪の日です。
「私は、雪遊びが大好きです。よろしくおねがいします。」ゆきちゃんが、すきとおるきれいな声であいさつすると、ひゅーとクラスの中に冷たい風が吹き抜けました。
ゆめみの幼稚園の子どもたちは、雪遊びはだいすきです。寒いのもへっちゃらです。
雪遊びが大好きなゆきちゃんは、みんなとすぐに仲良しになりました。
「ゆきちゃん、雪だるまををつくってあそぼう。」
「うん、いいよ。みんで大きなゆきだるまをつくろう。」
うさぎ組のお友達は、ゆきちゃんを先頭に園庭に飛び出しました。
ゆきちゃんは、園庭の雪の上をすべるようの動き回り、雪を集めて高く高く積み上げていきました。
うさぎ組のお友達はゆきちゃんが雪だるまの周りをとび回るのをただ見ているだけ。
ゆきちゃんはあっという間に園庭の真ん中に3メートルもある大きな雪だるまを作り上げました。
「ゆきちゃんはすごいね。」
うさぎ組のみんなは、大きな雪だるまを見上げて、目をぱちくりしています。
ゆきちゃんが幼稚園にやってきたその日から、毎日、毎日、大雪が降りました。
ゆきちゃんは、その大雪の中、毎日、毎日、園庭で雪遊びです。
園庭には、たくさんの雪だるまが並んでいます。大きなかまくらもいくつもできました。
かまくらは、雪のトンネルでつながっています。
園庭の中央にそり遊びをするゲレンデもできました。
ゲレンデの高さは10メートルもあります。ゆめみの幼稚園の園庭はまるで雪の王国のようです。
「今日は、雪の中のかくれんぼ。私がかくれるからみんなは私を見つけてね」とゆきちゃんは、園庭の雪にふわっととけこんでしまいました。
うさぎ組のみんなは、誰もゆきちゃんを見つけることはできません。
ゆきちゃんは、その日一日雪の中から出てきませんでした。
雪遊びの毎日が続くうち、いつのまにか冬の季節が過ぎて、暦は3月になりました。
でも、ゆめみ野幼稚園の園庭には、うずたかく積もった雪がのこっています。
ゆめみの幼稚園の園長先生が朝会で年長さんたちにお話をしました。
「今年は雪が多くて、園庭にまだ、こんなにたくさん雪がつもっています。でも、もう3月です。
だんだんお日様が高くなってきて、温かい春の日差しで雪もとけ出すでしょう。雪がとけたら、みんなはピッカピッカの小学校1年生です。」
うさぎ組の年長さんは園長先生のお話しを聞いて「わーい」と歓声を上げて喜びました。
でも、園長先生のお話があった次の日もまた次の日も次の日も、雪は溶けるけるどころか園庭に降り続けます。
不思議なことに街の中の雪はどんどんとけて土が顔を出しているのに、ゆめみの幼稚園の園庭にだけ雪は降り続け、うず高く積もった雪はいつまでたってとけません。
うさぎ組のお友達は、来る日も来る日も降る雪にうんざりです。
「早く、雪が解けないかなあ」と園庭の雪山をうらめしそうに眺めています。
園庭で一人元気に走り回っているのはゆきちゃん一人だけです。
「みんな早くおいでよ。雪遊びをしようよ」とゆきちゃんが呼びかけてもだれ一人、雪の園庭に出ていません。
「雪がとけないと1年生になれないよ」「ゆきあそびなんか、もうつまんない。」
みんなは、園庭に向かって「雪なんか早くとけてなくなれー」叫びました。
それは、園庭で一人ぽっちで遊んでいるゆきちゃんに向かって叫んでいるように聞こえました。
ゆきちゃんはみんなの叫び声を聞くと悲しい顔になって首をうなだれました。
その様子を見たうさぎ組のみんなは園庭に飛び出し、ゆきちゃんに駆け寄り言いました。
「ゆきちゃんに言ったんじゃないよ。ゆきちゃん、雪だるまを作ってあそぼう」
ゆきちゃんは、うさぎ組のお友達との久しぶりの雪遊びに大喜びです。
いつものように一人で飛び回って、5メートルもある大きな大きな雪だるまを作って大満足でした。
ゆきちゃんは、作った雪だるまの上に登って言いました。
「みんな、一緒に遊んでくれてありがとう。もう、北の国に帰るね。みんな、元気いっぱいの一年生になってね。
ゆきちゃんは、次の日から幼稚園に来ませんでした。
ゆきちゃんが幼稚園に来なくなってから、ゆめみの幼稚園の園庭の雪がどんどんとけ始めました。
ゆめみの幼稚園の卒園式も間近です。うさぎ組のみんなはもうすぐ1年生。
「ゆきちゃんは、雪の国からやってきた雪の精だったのかなあ。」
うさぎ組のみんなは雪のとけた園庭に向かって、おおきな声で言いました。
「ゆきちゃん、1年生になった冬にまたあそびにきてね。」