万葉集、山上憶良の「子を思う歌」


2019年5月1日から元号が万葉集から引用した「令和」となりました。

「万葉集」は奈良時代末期に成立した日本最古の和歌集で、歌の詠み手は、天皇、貴族から、下級官人、

防人、大道芸人、農民などさまざまな幅広い身分の人々です。

この万葉集に有名な山上憶良(やまのうえのおくら)の「子を思う歌」があります。

(長歌)「瓜食(は)めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ いづくより 来りしものぞ 

眼交(まなかひ)に もとなかかりて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ」

(反歌)「銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむに まされる宝 子にしかめやも」

この歌は、山上憶良が筑前国守時代、視察の旅の途中で詠んだ歌です。

旅先で何をしていても目の前に浮かぶのは子どもの顔、それがまぶたに焼きついて寝ることもできない

という、子を思う親の気持ちが素直に表現されています。

万葉集には男女の愛を歌った歌が数限りなくありますが、山上憶良には男女の愛の歌はありません。

そのかわりに憶良には、子どもを思う歌があります。

「銀も金も玉もどんな宝も、子どもに勝る宝はない」との思いは、子を持つ親なら誰でも共感できる気持ちです。

この慈愛に満ちた「子を思う歌」が1200年の前に作られた万葉集に収められているのです。

子を持つ親の気持ちは千古不朽のものなのですね。