レース鳩の(大橋式)交配テクニック




ここでは学術的遺伝論を展開するのでは無く、知識+経験+調査を元に
「どうもこうやった方が良い」をテーマに書いてみます!

ショートコンテンツ

<交配テクニック:ニックス編・・・・>
<交配テクニック:遺伝編・・・・・・・・>
<大橋鳩舎実施の交配テクニック!>



レース鳩の交配におけるニックス(ニック)に付いて
<交配テクニック:ニックス編>
長年、交配を行うと妙になじみの良い系統配合が出てくると思います。俗に言う相性の良い系統です。最近の活躍では、日本の巨匠岩田誠三鳩舎の岩田系とスーンチェス系です。
岩田系の1羽の鳩とスーンチェス系1羽の鳩の相性が良いだけでは無く、同系統の複数の鳩の相性が良く多くの配合から活躍鳩が出ました。この系統的相性の良いことをニックス(ニック)と言います。ニックスは通常偶然の産物で発見されますが、有る系統(自鳩舎主力系統)に対するニックスを研究しまとめ上げたなら何よりも強い武器となります。**最強交配理論**
この際、例外を除き相性の悪い系統配合ををネガティブニックスといいニックスと同様に重要であります。私の経験からホールマン系とアールデン系はネガティブニックスだと思っています。どの様な配合をしても私の鳩舎では活躍しませんでしたが、他系統の配合をすると同一鳩ですが良く飛びました。しかし、ホールマン系にヤンセン系を1/4ほど異血として入れてから、アールデン系と交配すると驚くほど飛びます。これは、ホールマン系もアールデン系もヤンセン系がニックスであるため、ネガティブニックスの血統をニックスとして結び付ける面白い結果です。と云う事で、私は、いろいろな系統とニックスにあるヤンセン系に注目しました。たぶん系統としてニックスの一番多い系統であると思っています。世界的にみて最も活躍している系統です。
現在、主力としている系統のニックスを活躍鳩の系統から探しだし異血として向かい入れることは重要なことです。皆さんも研究してみて下さい。

<ヤンセン系>
ヤンセン兄弟についてはいろいろな書物で書かれていますので、ここでは少しだけ紹介します。
1)銘鳩クランパー:B97−6592444
**現在のヤンセン鳩舎の基礎はオードメルクス(18回優勝)→ヨングメルクス(15回優勝)→ブラウェウィッテルヨンゲン(8大種鳩)→クランパー(最高種鳩)に継承されています。洋なしを半分に切った体型と晴天・逆風に強いヤンセンバードの特徴を伝えています。ヨーロッパではヤンセン鳩舎の本流として上記のラインが人気となり、活躍鳩を多く出していて、銘鳩クランパーは高齢のルイ・ヤンセンの最後の基礎鳩と云われています。

2)銘鳩シャンテリー:B89−6150123
**ヤンセン鳩舎の最後の優勝鳩と云われる銘鳩シャンテリーは、89年シャンテリー1,917羽中優勝のチャンピオンであり素晴らしいブリーダーでありました。日本ではヤンセンバードで一番人気の鳩で直系には相当数の総合優勝が出ています。有名な及川シャンテリー系も銘鳩シャンテリーの直系となっています。

3)フォスライン
**栗のヤンセンは世界的に人気となっています。現在のヤンセン鳩舎のフォスラインはオードフォスv90→オードフォスv93→ヨングフォスv98→フォスファン99→ラーテフォスv2004→ショーネフォスに引き継がれています。特に台湾では赤いヤンセンとして他のヤンセンとは別扱いされるほど人気です。なぜなら悪条件を帰るからです。さらにドイツではヤンセン=”栗”と言うように思われており、ヤンセン兄弟からの導入でもレットラインが中心に成っています。

私が主力としているゲリス(ストーセス)系は他の鳩舎での飼育が大変少なく ニックスを探し出す事が極めて困難でした。かなりの雑誌を見て研究したのですがニックスを探し出せませんでした。
そこで、私は逆にニックスの多い系統を探しヤンセンに到達し、ヤンセン鳩舎作(ラーテフォスv2004×銘鳩クランパー娘)永井 勇作(銘鳩シャンテリー直仔×銘鳩クランパー孫)ヘルボッツ兄弟作(019ライン×代表鳩ヨングフォスv98娘)を導入してニックスを研究しています。


<交配テクニック:遺伝編>
交配とは、動物をある目的に添って改良しようとする配合を指す言葉で有ると考えています。
**ですから自由配合は有っても、自由交配は有りません**
目的に添っての改良なので本来テクニックなど無いのでしょうが、テクニックと称してこれからの展開を行います。
(遺伝を考えての)交配には、大きな要素が3つ有ると思っています。その3つは相乗して関係し、どれか1つでも失敗するとその他の要素が旨くいってもレース成績の向上につながる交配は出来ません。

<3要素>
・能力(好ましい形質)の向上&確保 : 近親交配により獲得
・能力(好ましい形質)の抽出 : 淘汰(淘汰条件)により獲得
・バイタリティ&モルダントの向上と体&精神の回復力 : 異系交配による雑種強勢により獲得

遺伝的交配論を論ずるとき近親交配と淘汰は必ず触れるのですがバイタリティとモルダントについてはあまり触れられないようです。能力(好ましい形質)とは別に気質(体質)バイタリティとモルダントがレース成績に大きな影響を与えるのです。
特にベルギーあたりではこの「バイタリティ&モルダント」を重要視するようです。
私も、「バイタリティ&モルダント」が優秀な鳩の条件の多くを占めるものと考える一人です。
**優秀な方向判定能力を有していても、「群の先頭を飛ぶ&群を抜けて飛ぶ勇気」と「体&精神の回復力」が無ければ優秀なレース鳩とは成り得ません**
「方向判定」は能力であり「バイタリティ&モルダント」は気質(体質)です。能力(好ましい形質)の「抽出と向上と確保」は、近親交配で実施する事が出来ます(激しい淘汰が必要です)。しかし、気質(体質)である「バイタリティ」は近親交配によって弱まっていくのです(モルダントは弱まらない)。そこで優勢効果:ヘテロ接合度を増す異系交配由来の雑種強勢が必要に成ってくるのです・・・
このような大前提の上に立ち、本編では、3要素の関連と交配テクニックを概要的に述べたいと思います。
<3要素の関連>
有る優れた鳩の能力を(鳩の群として)向上させ確保するためには、近親交配は無くては成らないものです。では闇雲に近親交配して良いかと言えばそうではありません。ピュアに近い血を流す事も方法としては有りますがあまりに多くの労力と時間がかかります。日本の一般的なレース鳩飼育者には不向きです。
そこで私が推薦する(私の行っている)方法に「直仔×孫」の繰り返しがあります。理想論を言えば種鳩(作出)配合と選手鳩(作出)配合を全く別に行うことが良いのですが、限られたスペースと限られた時間から、その両方を同時に行えるのが「直仔×孫」配合の繰り返しです。
この方法の利点は、淘汰(基準の設定)が楽なことも上げられます。優れた鳩の極近親で能力の向上と確保を図った鳩の種鳩性能はその仔&孫をレースに使用し成績をチェックする事ではかることが出来ますが能力選定が困難です。なぜなら極近親鳩の同系配合ではどうしても「バイタリティ&モルダントの向上と体&精神の回復力」は低下していると考えるのが順当ですので、レース成績による基本能力の有無の判断は複数の要素の判断に成るためです。
しかし近親基礎個体の配合相手を変えての「直仔×孫」の配合なら異系交配の雑種強制によるバイタリティ&モルダントの向上と体&精神の回復力の向上も得ることができ「直仔×孫」交配の繰り返しによる近親交配の利点も引き出せると思います。従って、基本能力の有無の判定は一つの要素の選定基準により行うことができので容易なのです。
更に「直仔×孫」交配の繰り返しのどのタイミングでも選手鳩として使用することが出来ます。仮に近親基礎個体の(直仔×孫)×直仔の配合での鳩をレースに使用し選手としての性能を見ながら同腹の鳩から仔を引き種鳩の性能を見ることが出来ので時間的な無駄を無くすことが出来ます。また複数データからの基礎能力有無の判断が出来るため判断ミスが少なくなります。
**このときに重要な大前提が有ります**
性能を見る為のレースでは参加する鳩全てが最高の状態で参加していて能力を100%発揮できる状態でなければ成りません。そうでなければ能力の判定は出来ません。しかしそれは不可能な事です(最高の状態を判断できません)
そこで、自鳩舎の中で求めている性能が強く出たライン(狙ったレースの自鳩舎での活躍ライン)の最高活躍鳩を基礎にその鳩の「直仔×孫」交配の繰り返しを行い性能を高めていくのですが、その中で特異的な活躍をするラインが出現したならその最高活躍鳩を基礎に代をずらして「直仔×孫」交配の繰り返しを行い更に性能を高めるのです。
上記の事から、私は近親交配による能力の向上と異系交配の雑種強制をミックスし自鳩舎での活躍状況で淘汰を行う事が「鳩質の改善」を行う近道と考え実践しております。
<具体的な近親交配例>
・近親基礎個体を♀とすると、直仔の♂と孫(♀→♂→♀の孫)の♀を配合して出来た♀に直仔の♂を配合しします。=直仔 ×(直仔×孫):種鳩、選手鳩兼用です!
**直仔×孫 & 直仔×(直仔×孫)も選手として立派に活躍します**
・近親基礎個体♂の(直仔×直仔)の♂に近親基礎個体♂の♀の直仔を配合し種鳩とします。=種鳩配合:この配合ではバイタリティ&身体回復力が低下している個体が多いと考えられるので異系交配(バイタリティ&身体回復力の低下をカバー)し選手を作出してください。

これより先は具体例を掲載しています!

<大橋鳩舎実施の交配テクニック!>
私は、軽度の近親交配を行いそれに異血を咬ませ選手鳩を作っています。
*軽度の近親とは、直仔×孫の繰り返しを指します*
直仔×孫は選手鳩と種鳩の兼用配合なので小規模鳩舎には、うってつけです。この際の注意点は、近親にする個体の配合相手を必ず変えることです。
**近親基礎個体だけの近親系を作るのですから他の配合個体の近親に成らないようにする**
更に、遺伝は、♀→♂→♀→♂→♀→・・・と遺伝するようです。
その1
近親基礎個体を♀とすると、直仔の♂と孫(♀→♂→♀の孫)の♀を配合して出来た♀に直仔の♂を配合し♀を残し異血と配合します。
**直仔 ×(直仔×孫)の♀に異血の♂を配合し飛ばします。**
**直仔×孫 & 直仔×(直仔×孫)も選手として立派に活躍します**
こう考えると近親基礎個体の配合相手は何でも良いようですが、出来れば近親に成っていない鳩で「飛び筋」・「近親個体の目と逆の目:柿目と銀目」であればベストです。
では、近親基礎個体に配合するする♀はどの様に作れば良いのでしょう?これは運&感が大切です!出来れば固定された血統の翔歴の良い♂を購入し、自鳩舎で活躍(鳩舎内の活躍で結構です)の♀を配合します。そしてとにかく飛ばすだけです。何とか連合会優勝を取りましょう!出来れば総合シングルを取りましょう!
**大切なのは配合用の自鳩舎活躍の♀です。この活躍のレベルを何代かで上げましょう**
その2
直仔 ×(直仔×孫)は最低でも3年かかります。そんな時間が無いと言う人は、自鳩舎活躍の♂から近親系を作りましょう。近親基礎個体の♂の直仔×直仔(これなら上手いことやれば1年で出来ます)に異血の♀を配合するのです。(この時の近親基礎個体♂の配合個体は近親に成っていない鳩で「飛び筋」・「近親個体の目と逆の目:柿目と銀目」であればベストです)
**ただし、この方法は自鳩舎での活躍鳩を多く織り込めないため運が必要に成ります**
その3
ここで、上記で上げた方法をダブルで実施!
♂の近親基礎個体の(直仔×直仔)の♂に、♂の近親基礎個体の♀の直仔を配合し種鳩とします。(2年で完成します)**自鳩舎での♀活躍鳩を2年間:3羽織り込む事が出来ます**
その4
上記で作出した近親種鳩に異血を配合して飛ばしますが、その(近親種鳩×異血)に再度、異血を配合すると更に飛ぶような気がします。そしてその飛んだ鳩「(近親種鳩×異血)×異血」に近親種鳩を戻し配合し、また選手兼種鳩を作出します。
その5
近親交配のタブーもあります!気を付けてください。近親基礎個体の♀の直仔×直仔(いくら配合相手を変えていても良い鳩の出来る確率は皆無です)と言うことは、全兄弟掛けは最悪です!また近親基礎個体の♀の親子掛け(直仔×自身)も良い鳩になりません。緩い近親ではないのですが近親基礎個体の♂の親子掛け(自身×直仔)は成功例が多くあります。ただし、選手として大成した例は皆無です。
その6
きつい近親の成功例は、近親基礎個体の♂の(自身×直仔)×直仔です。近親基礎個体の♀の直仔×(直仔×自身)は最悪です!このように考えるときつい近親は近親基礎個体を♂にすると成功の可能性は有りますが、♀にすると厳しく成ってしまいます。飛び筋の一族を作るとき基礎鳩を♀にした方が当たる確率は高いようですが、飛び筋ファミリーとしての威力は近親に強いこともあって♂の基礎鳩の方が遙かに大きいモノに成ります。
その7
<お薦めの近親交配例>**赤い字の流れが基本の遺伝の流れ**
        ♂配合個体(異血)                ♂近親基礎個体の♀の直仔                              ♀近親基礎個体の♀     ♀近親基礎個体の♀の      (直仔×孫)×直仔                             ♂近親基礎個体の♀の直仔                ♀近親基礎個体の♀の直仔×孫                              ♀近親基礎個体の♀の孫  
           ♂近親基礎個体の♂の直仔                ♂近親基礎個体の♂の直仔×直仔                              ♀近親基礎個体の♂の直仔     ♂近親基礎個体の♂の     (直仔×直仔)×直仔                              ♂近親基礎個体の♂                ♀近親基礎個体の♂の直仔                              ♀配合個体(異血)
 
更にこの章つづく

'99年の地区N600Kの総合優勝”ゼロ・サン”は、その1=近親種鳩[兄弟×(直仔×孫)]に異血を掛け作出した♀鳩です。今年度は、近親基礎個体の直仔♂”ゲリス70”を配合しその4=戻し交配しています。作出された鳩は、来年度種鳩として使用します。





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